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田んぼの隠れた力:防災機能と田んぼダムの効果

 

田んぼは“天然のダム”——洪水調整という防災機能

大雨の際、田んぼは雨水をいったん貯留し、あとからゆっくり排水することで、河川のピーク流量を抑えます。中山間地の脇山では、狭い谷に水が集中しがちですが、田んぼが広く浅く水を抱えることでピーク遅延流量平準化が起こり、被害を和らげます。

消防団の現場感覚と“見えない労働”としての水管理

台風や線状降水帯のとき、消防団で水路・河川を見回ると、田んぼがしっかりと水を抱えている場面に出会います。農家としての水管理と、消防団としての備えが重なるとき、「田んぼがあって良かった」と実感します。

この防災機能は、水路掃除・堰板や排水口の調整・大雨前後の点検などの地道な作業によって支えられています。収量や品質だけでなく、地域の安全インフラを保つための見えない労働でもあります。

 

田んぼと森林の役割比較(流域治水の両輪)

森林は土壌浸透・貯留により流出を緩和し、田んぼは面で水を抱えて洪水ピークを和らげます。役割は異なるものの、どちらもグリーンインフラとして不可欠です。森林管理の不足や伐採は水文機能を弱めることがあり、流域全体の地形・土地利用に合わせて最適な組み合わせを考えることが重要です。

データで見る田んぼダムの効果と運用のコツ

 

全国推計:田んぼダムを広域に適用したモデル試算で、年期待洪水被害額が約6.5%減との推定。

  • 現地観測:球磨川流域の試験では、田んぼダム圃場のピーク排水が46〜80%低減(同条件の慣行圃場比)。
  • 配置の重要性:支流の組合せ・地形次第で効果が変動。戦略的配置が鍵。
  • 運用の目安:生育段階ごとの湛水深・期間の上限と、簡便な水位管理器具が研究機関から提示。

※地域や初期水深、堰高、降雨特性により効果は変わります。

まとめ:中山間地農業の価値とレジリエンス

  • 田んぼは“天然のダム”として洪水調整に貢献。
  • 効果を引き出すのは農家の見えない労働(水管理・水路整備)。
  • 森林と田んぼの両輪で、地域の流域治水とレジリエンスを高める。

私たちの10a=100万円という提案には、食と労働だけでなく、この防災の価値も含めたい。脇山米を選んでいただくことは、地域の安心を一緒に支える行動です。

 

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脚注・出典

  1. 柳原ほか「田んぼダムの潜在的な洪水被害軽減の国内地域別評価」水工学論文集 77(5)(J-STAGE)。
  2. 環境省 東北地方環境事務所「気候変動に対する洪水の適応策について」— 年期待被害額軽減率の引用あり(田んぼダム約6.5%)。
  3. 山口ほか「球磨川流域で実施された田んぼダムによるピーク排水抑制効果」水文・水資源学会誌 37(3)(2024)。
  4. 鈴木ほか「水田貯留機能強化を考慮した複数支流河川流域における洪水緩和効果—球磨川上流左岸流域—」水文・水資源学会誌 37(2)(2024)。
  5. 農研機構「豪雨時の洪水被害軽減に貢献する水田の利活用法」「湛水管理の条件」(技術資料)。
  6. 森林総研レビュー:森林伐採や管理状況が流出に与える影響(長期観測に基づく総説)。
  7. 日本森林学会誌:森林の蒸発散と流域水収支に関する研究(小松 2007)。
  8. 熊本県「球磨川流域治水プロジェクト」— 田んぼダムの仕組みと普及計画。

 

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